ノバティカルクロニクル フィナーレというかあとがきというか言い訳
ミラノマルペンサで飛行機を待つ。丸2ヶ月以上イタリアに滞在し いよいよ帰国する時がきた。
もっとここに留まりたいと思う反面、ここにはこれ以上いることは できないという確信もあるので、帰国したくないという想いがある わけでもない。
ここは少なくとも今は、自分のポテンシャルが発揮できるところで はない。そして私には私のやるべき事がまだ日本にある。だから戻 らなければならない。
何しにイタリアに行くのか?多分食べ歩きを目指していたんだと思 うが、なんせ本職は料理人ではないので実は自分でもどう過ごした いかよくわかっていないままやってきて、目標や目的がないまま漠 然と過ごした2ヶ月半。結果として、イタリアに”暮らしに来た” と言うのが最も適切な表現になったかもしれない。こんな曖昧な態 度で挑めばやはりあまり学びらしい学びはないし、結局何していた かというと毎日思った事をメモってたとしか表現できない。
いい歳の社会人になってからこんな無責任な旅に出るなんてと叱責 もされる。当然のことだ。多少なり責任のある歳になってくると、 自分の行動に目標と目的の説明を求められるようになる。なぜこれ を行わなければならないのか、具体的に何が達成されればよいのか 、いつだって説明できるようにしていなけばいけない。
でも目標と目的というのは所詮自分が知っている閉ざされた世界の 中で設定されるものだ。しかし、たった28年間の人生で、社会人 になってまだ数年のヒヨコが、何が正しくて何が間違っているかな んてどうしてわかるだろう?ここに来る前、そういうがんじがらめ の常識みたいなものに縛られる事に辟易していたと思う。そんな誰 が作ったかわからないルールなんかにとらわれずに、とりあえず飛 び出して自分の目で漠然と外を見てみたいと思った。
結果的に今回の2ヶ月は私なりのベストな過ごし方だった。料理人 なのか会社員なのか曖昧なままやってきて、巻き込まれた人たちは私が一体何をしたいのかよくわからなかっただろうと思う。しか しどうしようもない、私自身わかっていなかったのだから。未踏 の地でとにかく思い込みに捕らわれずに色んな化学反応を起こして 色んな事を考えていったら、いつかそれは自分の色になって、思想 や行動に広がりを持たせるようになるだろうなと思ってはいた。そ して実際にクロニクルを書き続けられる程、色んな事を感じとった 。
後付けの弁解みたいだが、きっとこういう人間的な成長は仕事にも 活きてくると思う。なぜなら、社会で成果を出す上で、大抵の場合 いかに他人を説得できるかがモノを言うからだ。そしてそれは、継 続的な勤勉による説得力もさることながら、私たち自身の人間性に 大きく依存するものだからだ。
TOEIC、役責、稼働率、契約金額。よく耳にする私たちの評価 基準。そこにあるだけで、私達は知らず知らずのうちに、こういっ た評価基準に自分の能力や生活をあわせてしまう。TOEICは何 点以上、稼働率は何%以上、云々かんぬん。でもいまは例えばここ に、「冒険率」という評価基準を入れてみたらどうなるだろう。社 員一人一人が、自分は新しいことに挑戦する冒険家なんだと思って いるような会社。すごく面白い会社になるんじゃないだろうか。
私がわざわざクロニクルを書き続けたのは、ろくに勉強もしないで 何をして、何を感じているのか、いい年してどれだけ世の中の基本 的な日常を初めて経験し、多くの事に気づき考え吸収しているか、 発信し続けるのを自分に課したからだ。何の制限もない無法地帯に 身を置く事で、どれだけ基本的な人間性の成長が達成されるのか、 自分をテスターにして示したいと思った。そうすることで、特に、 自分に続くであろう後輩に対して、狭い視野でモノを考えたり決定 したりするなと、世界は広くて見るべきものがたくさんあるという ことを示したいと思った。(上からですいません)結果としてどれ だけそれを示せたかはわからないけれど、何かを学ぶということの 手段の広がりを少しは示す事ができてればいいなと思う。
私たちは自分達が思っている以上に、誰に対しても自分の人生の説 明責任を負ってはいない。もしあなたが、誰かの、何かのために自 分を犠牲にして辛い想いをしているのならば、ぜひとも自分のため に立ち止まるべきだ。よくも悪くも、誰も見ていないし誰も気にし ない。でもその立ち止まりは、思っているよりずっと人生に有効な 時間になる。
与えられた条件は基本的にみんな同じだ。選ぶか選ばないかだけだ 。立ち止まる事、選ぶことに勇気が必要なら、このクロニクルが少 しでもその背中を押せばいいと思っている。
終わり
Mille grazie a’
Mitsushi Iwamoto @ Domenica D’oro / Tokyo
Alberto Ruzzon @ Gino’s bbq bar ristorante / Padova
Dolzan Paolo @ Perbacco / Mezzolombardo – Trento
Massimo Goloso @ Dal Massimo Goloso / Coredo – Trento
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イタリア旅行記 , 料理
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