ノトニクル

ノトがパスポートとクレジットカードを持って世界のどこかをうろつきます。

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ベトナムの伊豆 ムイネー Day 2

   

翌朝、ホテルに朝食のサービスはないので朝ごはんを食べに外に出る。この日は一日中ムイネーにいるのでバイクを借りる。10万ドン(700円くらい)。海岸沿いを走って途中でバンミーを買う。ここのお店が昨晩小さ目の豚肉を焼いているのを見て、あれは明日朝バンミーに挟むのではと予想していたのだがやっぱりそうだった。いろんなバンミーがあるが、既成のハムより炙った豚肉の薄切りのほうがおいしい。バンミーは1本1万5000ドン、90円くらい。ローカル人向けの食べ物はやはり安い。更に海岸線を走ってカフェ(やはり露店)を見つけて入り、コーヒーを頼んで買ってきたバンミーを食べる。ベトナムのお店はそのお店で何か注文すれば、持ち込みで何を食べても問題ない。先日もあるカフェで、向かいのフォー屋から出前をとって、カフェでフォーをすすっていたおじさんがいた。そのあとフォー屋のおばちゃんはカフェにわざわざ下膳と集金に来た。

カフェでミルクコーヒー(cà phê sữa đá)を頼むとあらかじめコンデンスミルクが注がれたコップにドリップ中のコーヒーフィルターが乗っけられてくるので、ドリップが終わるまで気長に待つ。100mlちょっと程度のフィルターを10分ほどかけてコーヒーが抽出されるので、ものすごく濃いコーヒーが抽出される。抽出が終わったらコンデンスミルクとかき混ぜて、グラスいっぱいに氷を入れ、氷を溶かしながらちびちびと飲む。

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生乳の代わりにコンデンスミルクが使われているのは、昔輸送技術が乏しく新鮮な生乳を各地に配送できなかったかららしい。ちなみにベトナムのコーヒー豆はほとんどがロブスタ種という豆で、この豆は強い苦みを持ち、風味に乏しい。しかしバターやカカオと焙煎することで、ヘーゼルナッツやチョコレートのような風味を添加出来、またコンデンスミルクと合わせることで強いミルクの風味がナッツやチョコレートの風味と相まって、今のベトナムコーヒーのスタイルが出来上がったらしい。

コーヒーをちびちびと飲んでいると、沖にお椀型の船が出航しているのが見える。ベトナムではこのお椀型の船がたくさんあって、この船に乗って浅瀬で漁をするベトナム人漁師がたくさんいる。さしずめ一寸法師のような外見でオールを漕いでゆらゆらと沖を横切っていくのだが、中にはモーターを付けたレーシング仕様のお椀もあって、こういうお椀たちはモーターボートさながらに水しぶきを上げて去っていく。船頭と呼べる部分がないので、どうやって舵を取るのか不思議なのだが真っ直ぐ進んでいく。モーターを付けていないお椀が複数、鴨の親子のように船に牽引されているケースもある。なぜかわからないがノトはこのシンプルで活用方法や形態が多岐に及ぶお椀船に深く魅了されている。

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IMG_0238レース仕様

実はこの日風邪を引いていたので、ベトナムの薬局で買った薬をこのカフェで飲んだ。ところが30分もすると凄まじい睡魔が体を侵食し始めた。1時間経つ頃には炎天下で眠りに落ちる程意識が朦朧としていたので、眠気が取れるまで公園で休むことにした。日本の方々はハンモックで寝たことがあるだろうか。日本ではそもそも公衆の場でシエスタという習慣がないから、ハンモックを持ち運んで寝なきゃいけないような状況があまりないと思うのだけど、ベトナム人はわりとところ構わず寝るし、都会以外のベトナム人は昼ご飯を食べて2時間以上昼寝をして12時から2時の熱い時間をやり過ごす習慣があるので、寝台たるハンモックの社会的地位も日本の比ではない。ベトナム人はあらゆるところにハンモックを吊るして昼寝をする。以下を一例にご覧いただきたい。

ハンモック

さてそのハンモック、ノトが睡魔に千鳥足になっていると、ベトナム人の友人は貝売りのおばちゃんに何か打診し、そして貝売りのおばちゃんはバイクをひとっ走りさせて自宅からハンモックを持ってきてノトに寝台を作ってくれた。でも1回の貸し出しでお金はきっちり10万ドン(700円)。バイクの一日レンタルと同じ金額であることを思うと結構高い。(そもそもハンモック自体10万ドンで買えるような気もする)でもあまり文句を言える立場でもない。

公園の木にハンモックを括り付けて、緊急の二度寝、エマージェントシエスタ。背反する二語である。マイさんはノトを放置し自分も近くに寝はじめる。二時間近く寝て、起きたら近くの木にマイさん含め3つのハンモックがぶらさがっていて、ハンモックがたわわに実っているような錯覚さえ覚えた。

寝起き病み上がりのノト、ビタミンを補給すべくマイさんをたたき起こしてフルーツを買いに公園を出る。酸っぱいマンゴーを買う。ベトナムには熟す前の甘くないマンゴーも売ってあって、muối ớtと呼ばれる唐辛子塩を付けて食べる。ホーチミンに来たときは熟す前に塩を付けて食べる果物を「甘くなるまで待てばいいのに」と受け入れられなかったのだが、ベトナム人があまりにも美味しそうに食べるので美味しいのかと思って食べ続けていたら、やはりあまり美味しくないのだけど癖になって好んで食べるようになってしまった。この唐辛子塩を付けて食べるのは甘くないマンゴーだけではなくて、スイカやパイナップルや梨もよく合う。塩で甘さが引き立つのもあるけれど、唐辛子のピリっとした辛みがクセになってしまう。ちなみにこれに味の素を少し混ぜると旨味もついてきてより美味しい。味の素はベトナムではヌクマム、砂糖、塩と並ぶ調味料として扱われるほど広く浸透しており、旨味粉とも呼ばれるけれども通称「アジノ」と呼ばれている。

 

ベトナムのフルーツの話をもうちょっとだけすると、ベトナムはフルーツ天国ではあっても全てのフルーツが美味しいかというとそうでもない。スイカとライチは美味しいが苺とグアバはすこぶるまずい。苺なんかボリボリと酸っぱい。そんな中、アボガドについてはアボガドはフルーツなんだなぁとここで再認識するほど美味しい。特にベトナムには町中にSinh tố(シントー)というスムージーが売られているのだけど、アボガドのシントーはもうびっくりする位美味しい。基本的にアボガドの果肉とコンデンスミルクと砂糖と氷をブレンダーにかけて出来上がり。アボガドの油分が氷のさっぱりとよくなじんで、なめらかなアイスクリームのようになる。店によってはココナッツミルクを入れたりもするがこれもまた美味しい。

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シントー以外にもデザートとしての食べ方がある。先日あるベトナムの田舎に行った時、おやつにアボガドと砂糖が出てきた。アボガドを縦に半分に切って種を くりぬき、そこに砂糖を少しずつ入れて果肉と合わせて食べるのだ。ざらざらの砂糖がアボガドの果肉を崩すので、すぐにクリーミーになる。他にも、カップに アボカドの果肉とコンデンスミルクと氷を入れて、スプーンで崩しながらおやつに食べたりもする。ベトナム料理は全体的に油分が少なくヘルシーだが、こうい うおやつや甘いコーヒーやらフルーツを間食するので、加齢とともに大抵のベトナム人は恰幅がよくなってくる。

八百屋でマンゴーとりんごと梨を買ってついでに皮をむいて一口大に切ってもらい、唐辛子塩も買って、ホテルに持って帰ってポリポリと食べる。果物だけだとエネルギーが足りなくて、チョコレートクッキーを買ってきてそれも食べる。目も覚めて腹も膨らみまたあてもなくビーチへ向かう。一通り波にまみれ、やはり特に面白い海岸ではないことを確認し、前日の隣のシーフードレストランに行ってまたハマグリと、今度は蛸とシーフード焼きそばを食べる。レストランにはたくさんのロシア人がいるが、彼らは割と寡黙で静かにディナーを楽しむ人が多い。おそらくウォッカを飲む彼らにとってベトナムのビールは薄すぎて酔うに酔えないのだろうけど。

 

翌朝また前日と同じカフェに行き、コーヒーを飲んで、今度はここのハムチーズサンドイッチを食べる。バンミーが台頭する中、外国人のお客さんが多いだけあってサンドイッチは欧米風で無難においしい。11時半くらいにバス会社の送迎が迎えに来て、ムイネーを後にする。

何かが飛びぬけて秀でているわけでもないし、ハワイのようにエンターテイメント性に溢れているわけでもないし歴史手建築物があるわけでもないけれども、日常から離れてどこかの海で潮の音でいろんな喧騒を濯いでみたいとき、ムイネーは手ごろなビーチだと思う。歓迎するわけでも拒絶するわけでもなく、まぁゆっくりしていきなよとこじんまりとした安らぎを与えてくれる。日常の延長にある小さなビーチ、ムイネー。またふらっと貝を食べに行こう。そしてハマグリの話ばかりしていたらハマグリが食べたくなってきた。明日はハマグリの炊き込みご飯でも作ろう。

 - ベトナムをゆく