ノトニクル

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外大生がお勧めする教材《ベトナム語》

      2017/07/02

巡り巡ってベトナム語を習得しなければならない状況になってしまい、人生で初めて受動的な理由で始めた言語、ベトナム語。もともと、そして今も特段ベトナムという国に興味があるわけでなく(すいません、でもやっぱり好きじゃない)、半年以上いてもこの国から何かを学び取りたいと思うこともほとんどないので、英語や欧米の言葉を学習する時のような「生活にまで入り込んでやるー!ゴゴゴゴ」という気迫もないしモチベーションもない。マイナー言語なのでTOEICや仏検のような検定もなく、とりあえず何点突破という目標も置くことができないで時間がだらだら過ぎてしまった。

ただ最近転職して状況が変わり企業戦士として末長くベトナムで活動することがほとんど確定したので、止まりかけていたというか止まっていたベトナム語学習を再開し出した。もうかれこれ半年近くだらだら勉強しているが、さすがに半年も経つとアルファベットの上下につきまくっている声調記号にも慣れてくる。まったく違う意味なのに間違いさがしに出てきそうなレベルで似たり寄ったりのスペル、例えばtrước(前)、thường(常に)、trường(学校)、trung quốc(中国)、trứng(卵)などの識別も徐々にできるようになってきた。でも残念ながら依然として個人的には本当に興味のない言語で、音は汚いし(特に南部は汚い)、スペルはわかりにくいし、使用人口がたった1億人だからマスターしたとこで国際的に汎用性が低いし、言語を習得したその先に学びたいものがあるわけでもないし、仕事で使うにはベトナム人のほうが日本語がうまいし、だいたいにして英語でいいし…と義務以外に好き好んでやる人なんかいるんだろうかと疑問である。

私が知っている限りベトナム語を学ぶ人は2種類に分けられる。仕事で使うか、現地に恋人がいるパターンである。英語やフランス語のように、映画を見たいとか観光したいとか、そういうファッショナブルな理由でベトナム語を勉強している人は一人も会ったことがないしまずいないんじゃないだろうか。バンドの名前を考えるにしても、”L’Arc〜en〜Ciel”(フランス語で虹)がIris(ラテン語で虹)でも様になるけど、Cầu Vồng(ベトナム語で虹)だったらなんかちょっと違うと思っちゃいますよね?

現地に恋人がいるパターンはモチベーションの源泉を手にしたも同様なので勝手に頑張ってもらえればいいのだけど、おそらくベトナムに駐在に行く人なんかは、会社でベトナムの語学学校に突っ込まれてベトナム語を覚えなけれなならない状況にあったりする。そういう人には汎用性の極端に低いマイナー言語を自主的に学びたいというモチベーションはまずない。そして私も似たような状況なので、今回はこの低いモチベーションの灯火を絶やすことなく、いかに学習を継続させるかという比較的後ろ向きな姿勢で語学学習について語ってみたい。継続は力なり。

 

①教材

語学学習というのは年単位で続けなければならない骨の折れる作業であるが、能力の向き不向きと同じくらいパートナーの一つである教材選びが習得スピードを左右する。言語というのはおよそ7歳までに完全な母語として習得され、17歳の時点で習得能力は低い状態になっている。(下記グラフ参照)つまり、ティーネイジャーどころかアラサーである我々にとっては気軽に他言語を習得できる時代はとうの昔に終わり、文法というテンプレートを脳内にゴリゴリ導入し地道な地ならしをすることでしか言語学習の術はないということである。表を出して力説せずとも感覚的に周知の事実だろうが。

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日本の義務教育における英語学習は受験目的の文法ばかりの学習で実践的ではないということは常々言われているけれども、だからといってあの学習方法が劣っているかというとそうではない。ただ単に会話の練習が著しく欠落しているだけであり、ネイティブとの会話練習を中学生くらいの段階からもっと導入すれば実用的な英語になる。日本の義務教育における英語文法学習を叩く人は英語圏出身で英語がある程度できる人か無知な英語弱者のみで、語学教育に携わる人なら文法無くして語学習得など柱無くして家を建てることに近いということは常識である。ちなみに参考として東京外大生の1年生時の語学学習方法を紹介しておくと、外大生は大体1年で古典を読めるようになるくらいのレベルに達する(さもないと留年)のだが、文法は3ヶ月くらいできっちりやってあとはネイティブとの会話とディクテーション(聞いて書き取り)でとにかく音に慣れさせられる。音声に集中的に暴露される機会が多いだけで、義務教育の英語学習と手法は全く変わらない。

前置きが長くなってしまったが、つまりは文法学習というのは外国語学習の根幹にあるものなので、その道の達人による良書、つまり日本語を母語としてその外国語に精通している人がきちっとその言語の全体像を把握してビギナーを先導してあげているタイプの教材を選ぶことが重要である。

そういった観点から、日本で手に入るベトナム語の教材をいくつかピックアップしてランク付けしてみた。マイナー言語の割にはいい教材が多いなぁと思ったら、大御所先生が精力的に複数出版されていた。

 

<評価基準>

・文法説明が詳細で網羅的である

・練習問題が多い

・音声つき(日本語音声なし)

・著者のコラムがある(著者がベトナムにいて、生きたベトナム語に触れている)

 

★★★(超良書、おすすめ)

No.1
ベトナム語レッスン初級〈1〉 (マルチリンガルライブラリー) 五味 政信 難易度)超初級〜初級

ベトナム語レッスン初級〈2〉 (マルチリンガルライブラリー) 五味 政信 難易度)超初級〜初級

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Amazonでもベトナム語関連のテキストの中ではトップであるが、私ももれなくこの教材をおすすめする。著者の五味先生は後述で紹介している学習者用ベトナム語辞典の著者でもあって、ベトナム語を深く探究した上でこのような初心者向けテキストを作っていらっしゃるので、全体を把握した上で初心者が文法的に押さえるべきところをしっかり押さえている。

例文が多く掲載されているのもよい。一つの課に2−3の新しい文法が含まれており、早すぎず遅すぎず程よいスピードで文法を体得でき、一つの課に60前後の例文が掲載されているので日本語だけ書き出せば書き取りの練習に使える。(ただし例文の音源は一部しかないので、ディクテには向かない)

また、後続の課の中での復習として、以前の課で出てきた文法をおさらいしてくれる。学習者の立場に立って作成された非常に素晴らしいテキストである。多分著書自身が素晴らしい先生なのだろう。

この教材は本当に目の行き届いた教材なので、個人的に中級をすごく待ち望んでいる。

 

No.2 ベトナム語 (世界の言語シリーズ4) (大阪大学世界言語研究センター 世界の言語シリーズ)  清水政明 難易度)初級〜中級

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前述の「ベトナム語レッスン初級」を全て終わらせてからとりかかるのにちょうどよいレベル。単語のレベルも全体的に「ベトナム語レッスン初級」より難しく、中級を目指す上で架け橋的存在になってくれるテキスト。漢字をルーツに持つ単語は漢字表記もしており、漢字を起源とし、主格の呼称がとりまく関係によって複雑に変化するあたりも早くから学習者に意識させようとする意図も例文に見え隠れしている。これはベトナム語をベトナムで使う際に最も重要な知識の一つで、自分の呼称を間違えるととんだ恥さらしになる。例えば「私」と訳される”tôi”を使う場面は実生活の中では非常に限られており、対教師や目上の人に対しては”em”、年下に対してはchịやanh、彼氏彼女は年齢関係なく彼氏自称anhと彼女自称em、親・じいちゃんばあちゃんに対してはconである。日本語の、「私、わたくし、あたし、僕、俺」の感覚ににているがもっと厳密であり、間違えると時として非常に失礼な意味になる。人称の呼称はこのテキストが一番ケアしている。

ちなみにベトナム人は、年が近そうな話相手に対しては、自分との適切な前後関係を把握するために初対面で年齢を聞いてくることが多い。それは女性の場合もしかりである。日本人的には歳を聞いたら無礼、ベトナム人的には呼称を間違えたら無礼であり、重要視するものが違うので、ベトナム人が出会って二言目で歳を聞いてきても怒らないであげてください。

 

No.3 ベトナム語-速読・速聴・速解 宇根祥夫 難易度)中級〜上級

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語学学習の中で最も辛く面倒だが効果てきめんの学習方法、シャドーイングとディクテーションを行うためにうってつけの教材。およそ60項目の長文が掲載されている。文法を一通り終わらせたら、ベトナム語 (世界の言語シリーズ4)で中級への橋渡しをしながら背伸びしてこの教材でディクテーションを始めるとよい。シャドーイングまで出来るようには根気が必要だが、出来るようになってからの上達は早く、さらにこの段階からネイティブと少しずつ会話できるようになるのでものすごい成長を実感し、達成感と優越感に浸ることができる。

こちらの教材は、東京外国語大学のオープンアカデミー(社会人向けの夜間スクール)の中級クラスの教材として使用されている。

http://www.tufs.ac.jp/common/open-academy/course/list/vietnamese/

 

No.4 五味版学習者用ベトナム語辞典 五味 政信

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最初に紹介した「ベトナム語レッスン初級〈1〉〈2〉」の著者の五味先生が最近出した学習者向け辞典で、語彙数も多くなくて老眼対応を思わせるデカ文字なのだが、この辞書が意外と本当に使い勝手が良く、面白くない勉強の中に語学学習の楽しみや言葉の歴史の輝きを見出せるようになった。これまではベトナム語の辞書アプリを使っていたのだが、やはり大先生が人生をかけて研究した成果としての辞書は質が比べ物にならないくらい違っていて、買ってよかったと本当に思う。

でも失礼だがそれにしても、何が面白くてこんな中途半端な言語にのめり込んだんだろうと思う。文法の薄っぺらさ、中国語の派生でしかない中途半端さ、漢字をギブアップした自国文化への軽率さ。複雑に変化するラテン語派の言語のほうがニュアンスが複雑に表現できてよっぽど面白かった。ここでそれを言い出してもしょうがないのだが。

 

★★☆(良書)

No.5 ニューエクスプレス ベトナム語 三上直光 難易度)初級〜中級

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Amazonでのランクはそれほど高くないのだが結構よくできたテキスト。ただ最初から文章が若干難しいのと、練習問題が少ないのが難。ニューエクスプレスシリーズは他の言語も含めて歴史あるテキスト群で、公共の図書館にもよく置かれているので、ためしに近くの図書館で借りてみてもよい。

こちらの教材は、東京外国語大学のオープンアカデミー(社会人向けの夜間スクール)の初級クラスの教材として使用されている。

http://www.tufs.ac.jp/common/open-academy/course/list/vietnamese/

 

★☆☆(可もなく不可もなく。使っても悪さはしない)

No.6 ベトナム語表現とことんトレーニング (「とこトレ」シリーズ)

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一応主要な文法は網羅されているが長い例文がなく、また文法説明も少ない、問題数が少ない上に簡単、漢字表記がない、あとちょっと日本語が変。

No.7 ゼロから始めるベトナム語―文法中心

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「ゼロから始める」シリーズはイタリア語の時もお世話になっていて、CASIOのイタリア語の電子辞書にはこの電子版が入っているくらい「ゼロから始める」シリーズは一定の歴史と評価がある。というわけでベトナム語版も割と良い教材なのかと思いきや、初心者向けのテキストにもかかわらず始めから読解がえらい難しくて、初級の文法をひとさらいやってからやっと取りかかれるレベル。

No.8 ベトナム語のしくみ《新版》 (言葉のしくみ) 

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ほぼ同上。特筆すべき点はない。

2017/6追記

ベトナム語が面白いほど身につく本

なぜかAmazonのランクが高かったので本屋でチェックしてみたのだが、英語で言う中1の半分レベルの文法しか載っていなく、ベトナム語のさわりのさわりしか学べない。この程度の内容のテキストを買って、ベトナム語をどのレベルまで習得しようというのでしょうか?ちゃんと始めるなら五味先生のベトナム語レッスン初級シリーズ、旅行でベトナム語にさわりたいだけなら旅の指差し会話帳(後述の通り、語学学習用としてはおすすめしないが)が適している。

☆☆☆ (買わないほうがよい)

No.9 ゼロから話せるベトナム語―会話中心 / 旅の指さし会話帳11ベトナム

これらに限らず、「すぐに話せる」系のテキストを使って話せるようになることは永久にない。いや、より正確にいうと、話しかけることはできるが聞き取りが出来ないので会話が成り立たない。話しかけるよりも聞き取って理解することのほうが10倍は難しい(1ヶ月で簡単な文を話しかけられるようになっても、簡単な文を聞き取るのに1年はかかる)。民度の高い日本のような国なら外国人が何を話しかけてきても現地人は理解しようと努めるし、英語ができる人が割って入ってきて助けてくれたりするが、ベトナムはそうじゃない。市場でまけてもらう、セオムに交渉する、タクシーのうんちゃんに遠回りするなと文句言う…もともと交渉の苦手な日本人が、つたないベトナム語で挑んだところで10倍の言い訳になってかえってきて聞き取れず一発KOで終了である。ちなみによっぽど慣れた感じで話しかけない限り、観光客の注文にベトナム人が二つ返事で承諾することはまずない。

旅の指さし会話帳については、食べ物のリストと読み方表記があるのでまぁそれは多少役に立つかもしれないけれど、ベトナム人というのは概ね理解できなかった部分を推測してくれない国民なので、こちらの発音が少々間違っているだけで言いたいことが伝わらないことはよくある。なので短期で旅行するためにベトナム語を練習して、いざ現地で伝わらない通じないとあくせくするよりは、おとなしく出されたものを食べているか、ガイドブックの写真なり文末についてる単語リストを指差す程度で済ませるべきである。はっきり言って、「ゼロから始めるベトナム語」やら「旅の指さし会話帳」やらに掲載されている単語を声調も知らない日本人が棒読みしてもまず伝わることはない。こんなテキストで頑張って、勝手にベトナム滞在に対する期待を高めてしまうような無駄な努力はしないほうがよい。日本人が海外に順応しにくい理由は、自分たちの生活パターンや思考パターンを持ち出して比較し、自分の土地でもないところで「日本なら、日本人なら」を繰り返して自ら勝手にこしらえた期待値とのギャップに苛まれるからだと常々思う。本当に「指さし」だけならまだ使い勝手のあるテキストだが、こんなしょぼいテキストなど買って会話イメトレなど、無駄な努力はされませんように。

No.10 聴いて,話すための-ベトナム語基本単語2000

言語というのは耳で聞いて覚えるのでキクタン系は一見役立ちそうなのだが、言葉だけ覚えても、特にベトナム語のように文章が声調によって音階付けられているような声調言語は単語の読み方を覚えてもそんなに役にはたたない。これに時間をかけるなら、CD付きの教材で文章を丸ごと覚えて、会話のメロディーを体得しながら出てきた単語を覚えることに時間を費やした方がよい。

No.11 らくらくベトナム語文法+会話 (CDブック)

著者の石井良佳さんは東外大出身であまり同胞を責めたくはないのだが、このテキストは酷い。これまで使ってきた、英語、フランス語、イタリア語、ベトナム語すべてのテキストの中で群を抜いて酷い。一見、コンテンツも多くまともなテキストに見えるのだが、なんせ誤字脱字が多く、極めつけはCDの録音内容がテキストと異なっていること、おそらくレコーディングを間違えた部分を無理やり切り貼りして編集したため不自然な音声になっているところがある。ベトナムローカルのどこか安いレコーディング会社に外注でもしたのだろうか?ベトナムならまだしも日本で客商売でこういう質の低いものを出してくるという神経も理解できない。しかも2500円で値段的には中級レベルテキストの価格帯なので、ボラれた感が半端ない。こっちは真面目に勉強しているのに、誤字脱字レコーディングミスで無駄に悩まされる、最悪なテキスト。

No12. 基本のベトナム語単語1300&定番フレーズ
これは電子書籍で一見スキマ時間に活用できそうなのだが、音声がついていないので結局役に立たない。例文はついているが、不必要に丁寧な言い方だったりして必ずしも定型文とは言えず、役に立たない。なぜその構文になっているのか説明は一切ないので、この本だけではそれがどのような場面で使われるべき文なのか判断できない。

かなり勉強して中級レベルに差し掛かっている初級者が、単語帳代わりに使うのはありかもしれない。しかしそういう人はすでに自分で単語帳を持っており、ひいてはこの本を必要とする学習者はほとんどいない。

2017/6追記

ポータブル日ベトナム英・ベトナム日英辞書

辞書と言いつつただの単語帳。重要単語の見出しも何もなく例文も使用方法の説明もなく、単語の羅列。五味版学習者用ベトナム語辞典の足元にも及ばない。これを買うのは金の無駄遣い。辞書が欲しいなら五味版学習者用ベトナム語辞典を買ってください。

②勉強の仕方

教材を紹介したので、効率的な学習方法についても言及しておきたい。

ディクテーション

読み上げられた外国語の文章を書き取る勉強法で、リスニング力と正しいスペルを一気に高めることができる。簡単なレベルから高レベルまで、どんな段階にあっても効力が高い。

やり方は、大体1文聞き流し、止めて書きとる。慣れてきたら2文くらいを流して書き取る。

シャドーイング

CDの音声を追うようにして、テキストを朗読する方法。ネイティブの自然なイントネーションが身につき、またこのシャドーイングはただ聴くだけよりもインプットとアウトプットを同時に行うので、はるかに記憶するスピードが早い。

やり方は、シャドーイングという呼称通り、CDの音声の直後に同じイントネーション、スピードで朗読する。

忘却曲線活用型復習

学生時代に「復習しろ復習しろ」と先生たちは口すっぱく言っていたと思いますが、ただ闇雲に手当たり次第学習量を増やすのは負荷を増やして挫折を招くので戦略的にやるべき。エピングハウスの忘却曲線によると、24時間に74%忘れるらしいのだが、実際に勉強していると、語呂合わせや漢字ルーツをもとにすっと覚えられる単語もある中で、こいつは永久に覚えられないんじゃないかというくらい脳の表面にへばりついて浸透しない単語が大体3−4割あり、復習の時間はそういった自分と相性の悪い単語や文章を集中的に叩くことで忘却をより効率的に抑制できる。本当に覚えの悪い単語、熟語は5回やり直しても覚えない。しかし、10回やって覚えられないことは多分ない。10回やっても覚えられなかったら、自分の頭の出来の悪さを楽しみながら、逆にいつまで覚えられないか試せばいい。

個人的におすすめの方法は、例文の日本語側をWordに全て打ち出して、間違うところだけ赤くして、復習時はこの赤いところだけをひたすらやっていく方法。以下の例は私が「ベトナム語レッスン初級」のテキストから日本語を書き出して作ったベトナム語書き取り表だが、当然単語でも使える。Excelの表形式にすれば間違った回数を表に書き込んでそこでフィルタをかけて「自分と相性の悪い単語・文章一覧」を作成しやすいのだが、Excelはセル内に文字が書きづらい、スペルチェックがかけにくいというデメリットがあるのでおすすめしない。

 

③乗り切り方

1) 山籠り

このテキストを1週間で終わらせる、このノートを1週間で使い切る、というふうにあらかじめ期限付きの目標を立てて、それを達成するために逆算して1日どのくらい勉強するか目標を立てこなしていくやり方。テキストを1週間で終わらせる場合、解答集を除いた教科書部分を7分割しポストイットを貼って、「このポストイットまで毎日達成しない限りは寝ない」と自分を追い詰める。ノートの場合も然り。ストイックな人向き。ただし短距離型で長くは続かない。3ヶ月である程度話せるようになりたい人、3ヶ月以上続けたくない人向き。タイトルを「山籠り」としたが、山でなくとも部屋に籠ることになるので山籠りとした。

2) 言葉の根底に流れる壮大な歴史を感じる。

ベトナム語というのはもともと漢字表記で、今でも辞書の6割くらいは漢字表記できる。先日ホーチミン市の地図を本屋で探していたとき、ほとんどの道路の名前がアルファベット表記の下に漢字表記されていて、中国語バージョンじゃなくて日本語バージョンが欲しいんだよと思っていたらただの漢字表記の名称であった。上記に紹介した学習者用ベトナム語辞典は漢字ルーツを持つ語は漢字表記をしており、真面目に勉強していれば1時間に1回くらい「へぇ」という語学的感動を味わうことができる。ちなみに今日のホヤホヤの「へぇ」を1例紹介すると、ベトナム語を習うと初日に出てくるkhôngという言葉、英語で”no”に当たる言葉なのだが、このkhông、元の漢字は「空」で、「空っぽ、ゼロ、無い」の意味がある。そして他に「空(そら)」という文字通り”sky”の意味もある。だから、airの意味のkhông khí[空気]やairlineの意味のhàng không[航空]の中にもこのkhôngが入ってくる。ちなみに読み方もたまに日本語の漢字音読みと似通っていて、前述のhàng khôngは”ハンコン”だから”コウクウ”には似て無いけれど(汗)、không khíは”ホンキー”で”クウキ”とちょっと似ているし、有名なのだとchú ý(注意)とかは読み方もそのままである。こういうふうにベトナム語を漢字を経由して理解できるのは漢字文化圏の特権で、[空]という漢字を知ら無い欧米人には到底理解できない。中国大陸から大陸伝いにベトナムまで漢字文化が伝播して、海を渡って日本にもやってきて、何千年も経って世界が近くなって何千何万キロを数時間で来れるようになった今、こうやってふと足を踏み入れた地で歴史の爪痕を発見するのってなんだかロマンを感じますよね。ってこれが単なる語学オタ癖だったらすいません。

3) 恋人を作る

以前の記事にもちょっと書いたのだけれども、語学学習においてこの手法に勝る学習方法はない。語学学習というのはどんなに頑張っても所詮語彙記憶とその忘却との戦いであって、聞き流しのスピードラーニングとか、留学したから話せるようになるというのは絶対にない。スピードラーニングやら留学やらで英語を身につける人は、実際はわからない単語をメモして調べて数日に一度テストしたり、前述のシャドーイングという手法でネイティブスピーカーを追って同じ文を読み上げたりと血の滲むような地道な努力をして力をつけている。(「聞き流しで習得」なんて端的に言えば情弱から金を巻き上げるための宣伝です。聞き流しで覚えられるなら洋楽聴く人はみんな英語喋れますよね)

で、こういった地道な努力を可能にする原動力(モチベーション)は「海外旅行で英語でショッピングしたい」とかまぁ色々あると思うのだけど、美男/美女を自分になびかせたいという人類存続のための生理学的な欲求に根差す原動力に敵うわけがありません。異性(もしくは同性)をなびかせたいという際限なき欲求なくして辛く長い語学学習を続けられるのはただの変態であるということは以前の記事でも書きましたが、相変わらずそういうことです。職業柄および出身校柄よく日本語の流暢な外国人に出会いますが、彼らの原動力は断言しますが漫画か日本人の恋人です。1億人の日本人と話せるということよりも、NARUTOの原文を読めるだとか、Kawaii日本人の女子をやりこめるだとか、金持ってそうな日本人の男に貢がせるだとか、そういう欲望に基づいています。むしろそれがないと人間は言語をネイティブ並みに極めるのは無理だと私は逆説的に考えるようになりました。

ただ逆に言うと、ネイティブ並みに上手くなるつもりがなくても、人間の基本的な欲望を原動力を意図的に逆手に取るのは最も効率的な機会利用であります。なので皆さん、繰り返しになりますが、まず言語を一つ学ぶにあたっては、その国の彼氏彼女を作りましょう。

 - ベトナムをゆく, 語学習得