ノトニクル

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ベトナム人と結婚してみた ④結婚書類準備編

      2017/08/30

日本人とベトナム人が結婚する場合、日本で先に婚姻証明を取得してベトナム側の戸籍に反映するか、逆の方法をとるか、やりかたは2通りある。私と旦那さんは私が既にベトナムにいたので、ベトナムで入籍しその入籍結果を日本の戸籍に反映させる形を取った。

日本とベトナムの国際結婚に対するお役所姿勢を比べると、日本は「どうぞどなたとでも結婚してください」というオープンな姿勢であるのに対し、ベトナムは「オイそこの外人、あんた精神疾患持ってない?HIVにかかってない?大学出てる?」と、割と余計なお世話というか、場合によっては人権侵害にひっかかる質問や検査もしてくる。日本人側は、「わたくし日本人めが、この度、ベトナムにおいて貴重なベトナム国民と結婚させて頂きたく」という姿勢が強要される。いや、厳密に言うと、姿勢として示さなくてもいいが書類が既にそのような記載になっている。旦那さんの父ちゃんも結婚式のスピーチで、「ダクノン省の法務局、市役所の方々、この度は結婚の承認をどうもありがとうございました」とスピーチしていて、どこの共産党組員だよと思ったが思えばこの国は共産党政権の社会主義国である。

ベトナムは各省で行政手続きが独自に決められており、結婚もしかり。なのでホーチミン市とハノイ市では結婚手続方法が違う。ダクノン省の人と結婚するとき、ハノイやホーチミンで集めた結婚申請書は使えない。ハノイ市やホーチミン市で作成したパスポート翻訳も、申請する省と翻訳した省が違うと下手すると無効となる。だからあらかじめ、「あんたの省内に日越翻訳できる機関はないから、ホーチミン市で翻訳して持ってくるからね」と根回ししておかなければならない。しかも、どうせあとから担当者が休んだりして、そんなこと聞いてない、言った言わないの空中戦になるので、できれば書面で送ってサインをもらっておく。

各省で申請方法が異なるので、日本大使館は全く役に立たない。彼らは日本で用意できる書類のことしかわからない。だから各省で、「婚姻具備証明書」とか「独身証明書」とか「出生証明書」とか、各省好き勝手に呼んでいる必要書類を日本大使館に発行依頼しても、それが日本のどの書類に該当するのかまで伝えないと、彼らは書類を用意してくれない。長年ベトナムにいるんだから読み替え表くらい作ってくれてもいいような気もするのだが、そういったサービス精神というのは皆無らしくて、システマチックに的確なコマンド(指示)を出してあげないと動かない。このあたりは日本の役所に通ずるものがあるが文句は言うまい。この婚姻証明プロセスで分かったことだが、コマンド出しても動かないベトナムの役所に比べれば天と地ほどまともな日本のお役所である。

旦那さんはダクノン省出身なのだが、このダクノン省、外国人との結婚を受けつけたことがなく、なんと国際結婚の手続きを市役所の人も法務局の人も誰も知らなかった。たまたま市役所内に旦那さんの“おじ”なる人がいたので、その人に役所内で話を通してもらい、必要な書類などを法律書で調べてもらうことにした。前述のとおり、全ての依頼事項は電話経由だと言った言わない聞いてないの空中戦になるので、メールでやりとりさせて証憑とする。日本の役所のように営業日〇日かかります、というのはないので、おじの気分次第、依頼されたスタッフの気分次第で作業日数が変わる。進捗が悪い時や手続きがはかどらないときはおじさんを飲ませ食わせして、文字通り“なんとか”してもらう。おじさんが何の手を使っているのかはわからないが、飲ませ食わせするとたいてい進捗がはかどる。

私が日本側で用意する書類は、本籍のある市役所で戸籍謄本さえ手にすればあとは日本大使館でどんな書類でも用意できる。(あとはベトナム国内で精神鑑定証明書取得が必要だが、この件はまた別の記事に書きます)戸籍謄本はパスポート並みに最強である。どんな書類にでも化ける最強のカードである。いやむしろ、パスポートと戸籍謄本さえあればどんな身分証明でも出来る日本の情報管理ってすごいんだなと思った。地元の法務局で婚姻具備証明書(「独身です、結婚できます」という証明書)を発行してもらっていたが、これはベトナム国内の日本大使館でも発行できた。むしろ地元の婚姻具備証明書は日本大使館で公印証明を受けなければならなかったので、日本大使館に戸籍謄本を持ち込んで独身証明書を発行してもらう方が早かった。婚姻具備証明書は翻訳機関でベトナム語に翻訳してもらう。必要ならパスポートのベトナム語訳もする。ベトナムでは英語は公式には「外国語の1つ」というポジションしかないらしく、基本的に全てベトナム語で表記され、外国語書類はその国の大使館の公証を得ていることが求められる。

書類をそろえて申請の日、私たちは旦那さんの地元のダクノン省の法務局に出向いた。平日じゃないと空いていないので有給をとって出かけた。法務局に出かける日の朝、市役所勤めのおじさんと、旦那さんの父ちゃんと、あと親戚のおじさんたちででチンタラチンタラコーヒーを飲む。何を話すわけでもないのだが出陣前の一杯というところか。

一時間ほど経って、やっと法務局に行く。おじさんの机の周りの同僚達に軽く挨拶し、このたびは~みたいなことを旦那さんがその同僚たちに説明する。まるで親戚への結婚報告のように、法務局の知らない人一人一人に挨拶するのだ。お役所だから書類出して終了かと思いきや、「礼を尽くして申請書を受理していただく」というスタンスのようだ。でも最後にちゃんと手数料もとられるのだが。

その後婚姻受理部署のようなところに連れて行かれる。夏なのにコートを着ているいけ好かない姉ちゃんがギロっとこっちを見る。別ににっこり微笑めとは言わないが、一応おめでたいプロセスだし、そんな警察の尋問みたいな顔をしないでほしいのだが。で、この人が見かけどおりのいけ好かないやつで、パスポートのベトナム語訳がないと言い出し、書類揃えてはるばる片田舎まで結婚申請に来た私たちを速攻ホーチミン市に送り返そうとする。しかしここで飲ませ食わせしたおじさん、この姉ちゃんに、パスポートは英語表記されているからいいだろうと説得してくれて、姉ちゃんはしぶしぶ電話口の上司に説明して(何人関係者がいるんだ)無事事なきを得た。その後も、パスポートの全ページのコピーをとって冊子にしてこいとなんだかんだといちゃもんをつけてきて、ケチなのか局の方針なのか知らないが目の前のコピー機で印刷はしてくれず、私たちは書類と一緒に放り出され、近くの印刷業業者でコピーしてから再申請に再訪しなければならなくなった。印刷業者もまたこれが気が利かないというか単に馬鹿なのか、1ページ目から印刷したコピー用紙を重ねて真ん中で冊子にしたもんだからページ数がめちゃめちゃになっていて、またそれを法務局の姉ちゃんにいちゃもんつけられていた。まったく、この人たちは一体なんなのか?この人たちはいつもこんな、無駄な、誰得にもならない言い合いに時間を費やしているのだろうか??しかしこういうところで口を出すとじゃあお前やれということになってしまうので、私はにこやかな貝になってじっと事の成り行きを見守っていた。でもこれで却下されてホーチミン市に送り返されたら、今後当分の間旦那さんに優しくできないかもしれない。結局、散々いちゃもんつけられたものの、ページ乱丁を極めたパスポートコピーはなぜか受理され、婚姻証明書が出来たら連絡するからとりあえずホーチミン市に戻って待ってろということになった。

申請受理され結婚証明書が発行されるまでにかかった日数は2週間くらいだった。婚約から約1年半、やっとたどり着いた入籍であったが、長すぎた春、感動なんて全くなし。出来たから取りに来いと連絡を受け、二人でまたいそいそとダクノン省に向かい法務局に出向く。法務局のほうは数十年に1回の大変珍しい国際結婚ということで、わざわざ真っ赤なお祝いの幕に「婚姻証明書授与式 〇年〇月〇日 ダクノン省ダクロン郡法務局」と印刷して、所長と副所長も来て式典の用意をしていた。かかった2週間はどうせほとんどが幕作成の日数に違いない。こういう人目につく部分は大げさなくらいきっちりやるのだ。

例によって「今日〇年〇月〇日!ダクノン省ダクロン郡法務局は!新郎XXX新婦YYYに!結婚証明書を授与します!!拍手!!」といった宣言が一通りあり、私と旦那さんは表紙がやたら分厚い結婚宣言にサインして(返却されなかったので法務局内に保管しているらしい。あんなものを何に使うのか)所長達と写真を撮って30分くらいで結婚証明書授与式は終了した。30分のうち20分は写真撮影だった。他のベトナム人は誰も法務局であんな式典しないそうなので、絶対法務局の社内報のネタ収集に違いない。そのあときっちり手数料も払わされ(恐らくほとんど幕代)足かけ1年半の結婚手続が終了した。

同一国内なら婚姻手続なんて署名さえすれば終了する類の紙仕事なのに、日本とベトナムの国際結婚になった瞬間、色んな人に頭下げて、飲ませ食わせして、賄賂渡して、法務局中に顔を覚えられるくらいの根回しが必要になる。ベトナムでよくある日系結婚手続代行会社の代行手数料が20万円だったら、その半分は賄賂に充てているんじゃないだろうかと思う。申請者本人たちが賄賂持って申請しに行ったって何だかんだといちゃもんつけられるのに、手ぶらの代理人が申請して受理されることなどないだろう。

ベトナムの役所には散々振り回されたが、でも今でも独力で婚姻証明作成に挑んでよかったと思う。20万ほど払って代行業者を使ってラクしたい気持ちはわからなくもないが、これから数多の試練があるであろう国際結婚において、結婚証明証取得はおそらく結婚書類準備は夫婦が力を合わせて乗り越える最初の関門、手ごろな縮小版試練だと思うので、日越カップルには是非結婚前に自力で挑んで一生二人三脚が出来るか試金石にしてみてほしい。逆に、頼りないベトナム人パートナなら破談になるので金で解決した方がいいと思うけど。

 

「結婚証明書授与式」の様子

 - ベトナムをゆく