ノトニクル

ノトがベトナムのどこかをうろつきます。

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テトのフーコック旅行 2日目

   

今回の旅行で持ってきて良かったものはいろいろあったが、その中でもコーヒー3 in 1は大活躍だった。コーヒー3 in 1というのはインスタントコーヒーとコーヒークリームパウダーと砂糖を適当に混ぜたものなのだけど、朝起きたてはもちろん、ベトナムコーヒーではないコーヒーが飲みたい時(私はあまりベトナムコーヒーを飲まない)や、口寂しい時など1日に3ー4回は飲んでいた。味気ない缶コーヒーが多くのサラリーマンの相棒であるように、薄いコーヒーは私にとって、ディープなコアベトナムの空間にあって、適宜都会のスタイリッシュな風を思い出させてくれる精神安定剤である。
2日目の朝もこのコーヒーを飲みながら身支度をする。旦那さんが珍しく朝6時くらいに起きて、両親とダベリにどこかに言ってしまう。何をそんなに喋ることがあるのかわからないが、旦那さんと義父は一緒にいるときは始終語り合っている。朝ごはんは前日に義父が買い出してきたインスタント麺5袋を義父が茹でて、私が自分用に買ったマンゴーをみんなで食べた。

朝食を食べ終わり、10時くらいに仏教寺院にお参りに行くことになる。日本の初詣みたいな感じかもしれない。南のほうにタクシーでずっと下っていき、東海岸に出るとその寺院がある。30分くらいで到着したのだが、既に日照りが強くて暑い。神殿が複数ある、結構立派な寺院なのだが、トイレがすごく汚かった。便座をアルコールスプレーで拭けばいいというレベルじゃなくて、全部のトイレが詰まって溢れて、かつそのまま放置されていた。

あまりにも暑いので参拝もそこそこに(旦那家族一行は誰もお祈りしてなかった、何しに来たのか)、一年前にオープンした世界一長いHon thomケーブルカーに乗りに行くこにした。スキー場のゴンドラに毛が生えた程度かと思っていたが、実際はかなり立派で作りもしっかりしており、全長は8kmもある。支柱なんか一番高いところで170mもあるらしく、柱というかむしろ細いビルのようだ。支柱一番上部の直径でさえ、ケーブルカーそのもの幅より太い。梅田スカイビルがちょうど170mらしいので、同じくらい高いということになる。うちの旦那さんは高いところが苦手なので、高ければ高いほど青ざめていた。予想外のスペックの高さに最初は感激していたのだけど、8kmもあると冗長で正直飽きてくる。景色も変わらないし。

このケーブルカーに15分くらい乗っていくつか島の上を通り過ぎ、終点のパイナップル島に着く。そしてケーブルカーの駅の前に電気バスがお迎えにやってきて、ビーチ兼レストランに連れて行かれる。 道中はずっと開発中のエリアで、何もアトラクションがない。到着した先にあったレストランはビュッフェ一択なのだけどこれがかなりまずくて、そのくせ値段が一人2500円くらいかかった。でもレストランはこれ以外にないので、このビュッフェが嫌ならビーチサイドに売っているウインナーやらトウモロコシ(甘くない)の選択肢しかない。すごくわかりやすく足元を見ている。知ってたら行楽弁当でも持って行ってた。
ビュッフェの中に焼き魚コーナーがあって列をなしていたのだけど、グリルの前で皿を差し出して焼きあがった魚を横取りするベトナム人がいて、私を含む列に並んでいる客はなかなか魚にありつけなかった。このおばさんスタッフも横入りして来る客にほいほいあげてしまうのだ。そして韓国の、丸眼鏡をかけた小太りな中学生くらいの男児が横入りして魚を横取りしたので、とうとう私は怒って「おいコラ!こっちは並んでんだよ!!」と英語で怒鳴った。するとこの男児はギョッとして掴んでいた魚をボトッとチリソースのボウルに落として去っていった。まるで泥棒猫と縁側の婆さんである。魚こそチリソースに沈んでしまったが、それでも前後のドイツ人のおばさんと中国人家族に感謝された。その後もグリルしているおばさんスタッフが、突然皿を差し出してぶん取って行くベトナム人に魚をあげちゃうので、「おいおばちゃん!こっち並んでっから!!」とサイゴン風のドスを効かせて怒鳴り秩序形成に努めた。私も随分たくましくなったものだ。数年前なら黙って見過ごしただろう。睨みきかせた甲斐あって横入りはなくなり、やっと3尾アジを獲得したのだけど、表面は焼き崩れてるくらい焼けているのだが骨周りが半生で散々だった。苦労が割に合わないが、でも魚好きの義父は喜んでいた。このレストランで一番美味しかったのはリプトンレモンティーだった。
まずいビュッフェで腹ごしらえした後、目の前のTraoビーチでひと泳ぎすることにした。このビーチ、綺麗は綺麗だが、期待していたような、船の影がくっきりと海底に映るような類の明度ではなかった。海の上に巨大なジャングルジムのフロートが浮いているのだけど、そこからダイブして遊ぶような歳でもないし、娘はまだ水にも慣れていない状態なので、楽しみきれず砂浜をうろうろ手持ち無沙汰になり、1時間程度で帰ることになった。帰りはまたケーブルカーで帰るのだけど、もちろん往路の時のような興奮も冷め切って、江ノ島からの湘南新宿ラインですかあってくらい一般的な移動手段の体をなしていた。旦那さんだけが行きと同様にきちんと青ざめていた。往路では騒いでいてちゃんと見ていなかったのだけど、本島の出発駅の近くに旦那家族が昔住んでいた集落が見えた。義父はダクノンに来る前漁師をしていて、今以上に貧乏で陸地の家にすら住めなくて一家は水上にイカダ風の家を作って水上生活をしていたと旦那さんが昔言っていた。義父曰く陸地にも家があったようなのだけど、いずれにせよ結構日暮らしレベルで貧乏だったようだ。
ケーブルカーから降りて、タクシーでヴィラまで戻る。ヴィラに戻ると、ルームクリーニングが入ってなかった。掃除しとく、ランドリーもやっとくよと管理人が二つ返事で請け負っていたのだが、一つも実施されていなかった。旦那さんが確認に行くと、すごく気だるそうなハウスキーピングのおばさんがやってきて、今日はテト元旦だからルームクリーニングはないんだと言う。でも旦那さんが、ヴィラ側はやると言ってると文句を言って、なんだかんだでクリーニングしてもらう。ハウスキーパーのおばさんがもう一人来て2人で掃除をするのだけど、ぼさぼさの箒でもって床をばっさばっさと掃くだけで、逆に埃が舞ってしまう。ハウスキーパーという職業人なのではなくて、向かいの家に住むおばさんなのだろう、どう掃除するべきかもわかっていないようだった。私のカメラのレンズカバーまで箒でベッド下に掃き飛ばしやがって、好意的にとればホッケーで言うところのナイスシュートというところだが、娘の哺乳瓶の蓋までドリブルかましやがるのでレッドカードで一発退場とした。
夕飯は外で食べることにして、Hanh Nhungレストランという魚介を生け簀からオーダーできる店をタクシーのドライバーに紹介してもらった。VIPルームもあるかなり大きなレストランだったが、7時頃に着いた時は数組しかいなかった。生け簀食べたい魚介を選ぶ。私は大きな赤貝を選んでグリルしてもらうことにした。オーダーしてから来るまでが結構遅くて、後からわかったのだけどこのレストランは団体客向けで、7時半頃にやって来た団体向けの準備で調理場が忙しかったらしい。赤貝の他に、シーフード炒飯とカンチュアという酸っぱいスープと、空心菜の炒め物と、グリルした地鶏、白米を食べた。私以外生け簀から選んだ魚介を食べた人はいなかった。多分結構高かったんだと思う。フーコックらしいものは何一つなかった。赤貝はヌクマムを加えてグリルしたのかしょっぱくて、かつギーバターとフライドエシャロットも加えらてていて若干バター醤油風味だった。想定していたのはハマグリの塩焼きのようなあっさりとした味付けだったのだが、火を入れ過ぎて身は固くなり、素材の味もわからない仕上がりで正直がっかりだった。

赤貝、素材はいいのに。

お会計は6名+幼児で8,000円程度だったので会計上はそれほど高くないが、一般庶民の食べるメニューを一通り食べただけで客単価1,300円はベトナム的には恐ろしく高い。ケーブルカーもビュッフェもそれぞれ2,500円だったので、日々慎ましい生活をしている旦那家族にとっては楽しさよりも金がかかる印象が強かったかもしれない。それもあってか翌日からは散在気味のうちの家族とは別行動をとることになった。

 - ベトナムをゆく

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