ノトニクル

ノトがベトナムのどこかをうろつきます。

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ベトナム現地採用の実態

      2016/12/13

みなさんは海外で働いてみたいと思ったことはありますか?今日は私がベトナムで垣間見てきた、ベトナムにおける海外就職の実態についてご紹介しようと思います。 先に結論だけ端的に言ってしまうと「海外就職」を謳っているポジションにろくなポジションはないです。日本の労働基準法が適用されない無法地帯において搾取されるだけで、好き好んでこんなところに行く人は有益な情報にたどり着かなかった人たちだろうな・・・ということで、自分の痛烈な反省・自戒をもとに、実態をお伝えします。日本に出戻った件を書いた記事と内容は結構かぶるのですがご了承ください。

以下、私が半年で垣間見た2つのケースについてお伝えします。ベトナムは今橋とか道路などのインフラ系、工場建設等が伸び盛りなので、そういう職人系も求人が多いですが、私はそのケースで働いている人に会ったことはないので除きます。でもこの以下の2ケースよりはまともそうです。

 

現地採用ケース① 日系大企業

これは日本からやってきた駐在員のコマになるポジションで、英語がまともに話せないことも多々ある駐在の通訳や日本本社から来るお偉いさんの接待、“日本流”を知らないローカルスタッフのヘマの尻拭いをする役回り。月給は税前USD1500くらい。USD2000だとあたかも年収800万貰っているかのような高給取り扱い、そして重責を押し付けられる。あなたは身を粉にして働くが、給料は本来の1/3とか1/4とかで、どんなにブラックな環境であっても労働法による身の安全など保障されない。

現地採用ケース② 日系中小

採用は特に若者が多く、新卒から30前くらいまで。体力と無知とモチベーションに付け込んで給料は日本の新人の半分以下で働かせる。求人の中で見た一番低い給料が500USD、800USDもあるがパートタイムかよっぽどスキルセットのない人向け。概ね1,000USDから1,500USDに多く分布する。物価が安いから給料も安くていい…わけがなく、この給料では日本レベルの医療や教育を受けるための貯金もままならない。所変われどやはり日本人、病に倒れたり家族ができると日本水準のサービスが必要になるものだが、会社側は社員の中長期的な人生のリスクに配慮することはなく、あくまで瞬間的な労働力だけを買う。 また往々にしてスキルやナレッジを盗み取るべき素晴らしき中堅先輩や古株がいない。これ社会人として成長するのにかなり痛い。また、日本でのまともな社会経験が少ない人間が多く携わるため、“日本人のあたりまえ”や“当然達するべき成果物のレベル”が共有されず、机をたたいて感情的に怒鳴り散らしたり、仕事とは全く関係ない人格や外見を否定をする発言で貶めたりといった行為も横行する。それで心を病んでもケース①同様日本の労働法に守らていないので泣き寝入りで最後はひっそりと帰国がオチです。

結局どちらのケースにも入れることは、 海外で働く=外国人と異文化や異なる習慣を超えて仕事をし、人間性を向上させ、ビジネスレベルの英語力に磨きをかけ…と期待しているなら名もないアメリカの大学のMBAの方がよっぽどいいというくらい劣悪で伸びしろのない環境です。ベトナムの現地採用は、仕事相手は基本的に日本人と行い、ベトナム人の管理は管理なんてたいそうなものではないのでマネジメントスキルなんてものは身につかず、英語はベトナム人の下手な英語につられて劣化します。加えてどの事務所も本社の様にきちんとした人事部など持っておらず駐在が片手間に現地採用面接をしているので、本人たちがどう採用・教育したらいいかわかっておらず、またその暇も気力もなく、社会人の“いろは”を誰も教えてくれません。 私が新人だったとき、以降大変にお世話になる先輩が「5年は子供を作るな、そしたら出産で離れても戻れるから」とおっしゃっていまして、そりゃある種のハラスメントじゃないのかと思ったのだけど、今はそのアドバイスをかけてくださって本当に感謝しています。5年というのは昇進を挟んで役職が変わり立ち位置が変わることも含めて、社会人の駆け出しから中堅の頭までに必要とされる叱責を一通り受けられる期間で、日本社会のしきたりの中で高いパフォーマンスを出し続けてきた先輩に、しょうがないなぁ最近の若者は~と無条件で目をかけてもらえる期間です。その期間に、ベトナムの限定的な日本人コミュニティーの中で、ろくに社会でもまれたこともないような人に搾取され、ろくに教育もされない状態で、どれだけ無為に日々が過ぎていくかなんて想像に難くありません。 はっきり言って99パーセントの現地採用はただのコマです。日本の労働法のように手厚く保護されておらず、年金も社会保障もない、自己責任という名の下の企業体として当然持つべき責任の放棄、「グローバル人材」、「挑戦」、「熱意」という言葉で釣り、本来会社が負担すべき負荷を「うちはベンチャーだから」とか、最悪「来たくて来たんでしょ」と足元を見て社員に負荷させてきます。日本を元気にしたいとか、海外でキャリアに積みたいとか、(それが具体的にどんな利益を生み出すのか突っ込みどころ満載ではあるが)ある種の熱意をもって来るのは素晴らしいけれど、20代の若気の至りにしては30歳になになった時あまりにも重い致命傷に苦しむことになります。

副次的なデメリット

労働環境が悪いから日本に帰ることにしたとして、追い打ちとして直面するのは転職マーケットにおける冷遇です。現地採用でどんなに頑張ろうが、日本の人事は全く評価しないどころか通常マイナスの評価をします。無条件で以下2点の色眼鏡がつきまわります。

・協調性に欠け、日本社会に適応できずドロップアウトした

・キャリアのビジョンや計画性がなく軽はずみ

なぜかっていうと、通常の人事部はベトナムやらタイやら外国での苦労がどんなものなのか推し量ることは出来ないし興味もないからです。ご丁寧に定量的にその苦労の負荷や価値を調べてくれる人事はまずいなくて、そんな面倒なことをするなら別の“普通にちゃんとできる人”を採用する方にエネルギーを向けます。そしてこの減点を挽回できるのは、日本であらかじめ積んでいたキャリアと莫大な利益創出経験くらいです。意識の高さとかモチベーションとかは見てません。 ここで日本人事の頭の固さ、了見の狭さを批判するのは筋違いです。日本人とはそういうものなのです。それが時と場合によってよい方向に振れるケース、悪い方向に振れるケースがあるだけで、一致団結し”ウチ”に全てのエネルギーを注ぎ込むこのクソ島国精神が昭和に高度成長を作り出し、世界屈指の発展を築いたことを忘れてはなりません。そしてその島国精神は日本海が地続きにでもならない限りここ10年20年で変わることは期待できません。 というわけで、少なくとも2015年のこのタイミングで新卒でベトナムに来てしまったような場合、日本に帰った時居場所を見つけるのは大変に難しいでしょう。

結論

【中堅以上の企業の駐在枠で行け】

大切な後輩や自分の子供が海外で働きたいと言ったら私はなんとアドバイスするか?十年単位で何億円もマネタイズできる技術があるわけではないなら、自分を必ず守ってくれる企業に所属して、その資産を活用して挑戦しなさい、と言うと思います。社会的なお作法も、手に職もない若造が海外に行ったところで誰でもできるオペレーションをひたすらこなす作業に終わるし、グローバルなダイナミズムなど微塵も手にできないです。会社という人脈と技術と資金の塊のサテライトとして動く方が何倍も効率がいいです。いつそういうポジションにつけるかわからないと言う人もいるけど、能力があって海外へのモチベーションが高い社員は、会社がよほどアホでない限り海外に出してくれます。(その会社が超ドメスティックでない限り)それまで鍛錬して待つ根気がないならとりあえず力つけて海外ポジションのある会社に転職すればいいです。副業が許されるなら副業がベストです。とにかく手ぶらで個人で行ったところで、日本での100倍の苦労をして日本でマイナスの評価と成果を得るだけです。

個人的な反省と対策

この記事は個人的な体験も踏まえて書いているので、同じ目に遭わないようにこの状況に陥った原因と反省を一緒に紹介したいと思います。何が私をこんな向こう見ずな選択をさせた原因で反省点かというと、多くの情報を収集し有益な分析を行なわなかったことです。もっと簡単にいうと、「やってみなきゃわからない」と思い、全てを過信していたということ。コンサルとして恥ずかしいです、精進しようと思います。もしあなたがベトナムとかどこか海外就職しようと思っているなら、実際そのロケーションで働いていた複数の人に実態を聞くべきです。しかしながら注意しなければならないのは、その人のキャリアの考え方とか、人生観とか、あとはその人の会社における立場の違いが影響して、物事がとてもポジティブにもネガティブにも捉えられるので、その解釈をそのまま参考にしたら公平な判断はできません。例えば経営者に聞くのと従業員に聞くのとではその会社の像がまるっきり異なります。「自分で考えて行動する」は「企業の教育責任放棄」だし、「経営の柔軟性」はただの「戦略不在」だし、「迅速な意思決定」は「ワンマン経営」だし、「オペレーションを改善する」は「雑用をうまく片付けている」となります。そして誰もが失敗を語りたがらない。複数の視点の原始情報からいかに裏を読み取り将来性を読み取って、有益な情報とするかが重要です。

私が無知な現地採用枠時代に感じたことを、もっとドロッドロに書いた記事はこちらです。(現地採用について考える)いまだ海外就職に憧れている人はこれでも読んで目を覚ましてください。

 - ベトナムをゆく, 働くことについての考察

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