ノトニクル

ノトがベトナムのどこかをうろつきます。

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ポリープ探検記 − Binh Quoi 2.0始動

   

ホーチミン市に来てから空港の近くのSunny plazaという素敵なマンションに住んでいた。Sunnyには一階に欧州系のスーパーがあって、二階にイケイケなジムがあって、全体的にはこじんまりとしているが使い勝手が良くてとても気に入っていた。オーナーもぼったくりには縁のない常識的な人たちだった。敷地内にはいつも声かけてくる気さくなおばちゃん達がいて、近くに色々ショッピングモールもあって、美しい飛行機の着陸がひっきりなしに見えて、ベトナムチームがサッカーに勝つと大騒ぎになる大通りに面していて、ベトナムの活気に付かず離れず触れられる素敵なマンションだったのだけど、この度娘の保育園事情で2区に引っ越すことになった。

2区も広くて色々エリアがあるが、私たちが今回引っ越したのはタオディエンという地区で、一応ホーチミンで一番のお洒落地区ということになっている。代官山のおしゃれ度から比べればその1%にも満たないが、それでも(良くも悪くも)ベトナムらしさゼロのお洒落なお店やレストランは比較的多い。1区で成功したら2区のタオディエンにフラグショップみたいな2号店を出す、という流れもあるらしくて、今ホーチミンで最もトレンディーな地区として認識されている(らしい)。

日系保育園もあるし、色々揃ってるし、おしゃれだし、なかなか過ごしやすい土地なのではと思って意気揚々と引っ越して来た。しかし実際住んでみると外国人基地かってくらい外国人と富裕層ベトナム人しかいなくて浮世離れしていて、今までは割とローカルに根差した生活をしてベトナムに溶け込みつつあった私はちょっと辟易してしまった。ローカル生活から完全脱却してこんな外国人基地に丸く収まってしまったという罪悪感みたいなものも多少ある。引っ越した後にホームシックになった。もう1ヶ月以上経つがまだSunnyが恋しい。

そんなこんなでタオディエンから一人寂しく懐かしSunnyの方角を眺めていたら、ふと手前を流れるサイゴン川の先に鬱蒼と茂った森があることに気が付いた。こんな”エルマーの冒険”に出て来そうな森がホーチミン市内に残っていただろうかと思って色々調べてみたら、この鬱蒼と茂る森の先が30年来の未開発地だということを知った。サイゴン川が迂回しすぎて入口が極端に狭いポリープ状になってしまい、内側が”最後の楽園”状態になっていた。開発計画はずっとあるが頓挫しているらしい。鳴り物入りの地下鉄開発だって遅れてるくらいなのでなんら不思議ではない。

便宜上これをここでは「ポリープ」と呼ばせてもらうと、このポリープの上部に、昔結婚パーティーをやったBinh Quoi Tourist villageがあることが判明した。またあなたですか、いやぁ御縁がありますねぇ、あの時はお世話になりました(いやお世話しました)。確かにあの公園までの道はとても細い1車線だった。あの道で開発物資を運ぶのはなかなか無理がある。他に橋もないようだし未開の土地になるのもうなずける。(※この川が迂回してポリープ状になっているのを正式には何と呼称するのでしょうか、「川 ポリープ」でググってもさすがに出てこなかった。「川 迂回 内痔核」でもやはり出てこなかった。)

Binh Quoiポリープとタオディエン。Google earthで見るとポリープの森感がすごいことがわかる。
Binh Quoiポリープ開発計画 (正式にはThanh da新都市開発計画)

しかし今私がいる側の2区も、かつてはホーチミンを代表する未開の土地で、しかも最貧地区の1つだったそうだ。それが大きな橋が出来てから一気に栄えて、地価も爆上げ、ホーチミンで最も高い土地の1つになった。そんなタオディエンの漢字表記はその名も「草田タオディエン」。かつての姿が慮られる。

だったらこのBinh Quoiポリープも大きな橋が出来れば地価爆上げなんじゃないの?と、その名も”Binh Quoi 2.0”ですよと勇んでポリープ探検に行ったのが2週間前。嫌がる旦那さんを引き連れて、まずはタオディエン側の川沿いのカフェから対岸を目視調査、なにやらポリープの対岸には船着き場のようなところがあることを確認。ヴィラの屋根のようなものも見える。意外とおしゃれな隠れ家的ヴィラがあったりするのだろうか?あちらにバイクを持って渡れれば早いのだが、そうはことはうまく運ばない。その時滞在していたおしゃれカフェが自前で保有しているプライベートボートを1時間1万円で借りることも出来たが、バイクを乗せられないと対岸に着いても動けないし、そもそもポリープ探検にそんな金満的な裏技アプローチはよろしくないような気がする。ポケモンのように一つ一つ手順を踏んで着実に攻略していかなければならないような気がする。

対岸のBinh Quoiポリープ
右側拡大。舗装された歩道があるようだ。後ろのマンションはポリープではなく2区に建っている。

対岸からの目視確認を終えて、やはりポリープの付け根部分から入り込まなければならないということになる。”いうことになる”とは書いたが私がそう決めて旦那さんが後に続いているだけなのだけど。旦那さんは私のこのポリープに対する強烈なこだわりにかなり呆れつつも付いてきてくれる。

カフェを出た時はまだ朝9時くらいだったのだけど、すでに結構気温も上がっていたのでタクシーで移動することにする。タクシーの運転手は「あんなところに何しに行くのだ」と怪訝そうな顔をするので、「土地を買いに行くんだよ!」とたぶらかしてとにかく車を走らせる。よく知ってるBinh Quoi Tourist Villageを通り過ぎて、いよいよ未踏のポリープ内核に入り込むところまできた。ところが道が細すぎて、かつ左右が沼になっていて、車両だと滑り落ちそうだったので早々と諦めて引き上げることになってしまった。後ほどバイクで来ようということでこの日は諦めて帰ることになった。帰るにしてもUターンもままならないほどだった。

右に行こうとする
無理だった

こういうポリープがほかにもあるんじゃないかと思って調べたら、ありますありますポリープ3つ、Binh Quoiポリープは上から数えて第2ポリープだとして、第3ポリープはなんやらヴィラが結構建っているようだった。Google earthで見たところ何やら6車線ほどの大きな幹線道路に、マンションやヴィラらしき建築物がポツポツある。調べたら壮大な新都市計画すらある。翌日たまたまここを通ったのだけど、この6車線は川の下を潜ってレインボーブリッジレベルの橋に出る立派な幹線道路だった。

なぜタオディエンほど栄えていないのかはわからないが、少なくともここは既に息がかかってる土地なので、私はBinh Quoi 2.0に集中しようと思っていた矢先突発性難聴で入院になってしまった。退院したらまた出直そう。ローカル的な面白みを失ってしまったタオディエンで、新たな冒険が始まった。

サイゴンの3つのポリープ
第3ポリープ開発計画(正確にはThu Thiem新都市開発計画)

 - ベトナムをゆく

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