ノトニクル

ノトがベトナムのどこかをうろつきます。

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ジムでダイエット企画 #腹にパン生地

      2018/12/13

先日、普段着ることがないTシャツを数年ぶりに着る機会があった。いつもは腕を全部出しているか全部隠しているのであまり意識をしてなかったのだけど、Tシャツの袖で腕が部分的に隠れていると二の腕が思っている以上に太くなっているような気がした。そこで旦那さんに、二の腕太くなった気がしない?と聞いてみると、元気よく、「うん!二の腕と腹周りが太くなったよ」とのこと。そんな断定される程太った?と聞くと、「太ってはない、全体としてはまだスリムで、太ったのは二の腕と腹周りだけだから安心して。」とのこと。それはいわゆる中年太りではないか。何が安心しろだ。軽くショックを受けている私を見て、「子供を産んだんだから普通だよ」と旦那さん。どこまでもフォローの仕方を間違えるうちの旦那である。

こうして私のダイエット企画は始まった。

私はもともと太りやすく、人生の大半を小太り状態で過ごしてきたので、年がら年中体型には気を付けているのだけど、最近は授乳で激やせしたことにかまけて気を抜いてポテチとかを食べてしまっていた。前述に“小太り状態”とは書いたが肥満というほどではなくて、ダイエットの広告で“昔すごくデブだった人が痩せた時のビフォーアフターのアフター”的な、痩せても太ってもいない至極健康的な中肉高背である。ただ、身長が高いので、体型細めで「背が高い」、普通体型だと「デカい」と形容される。高さがある分面積増は威圧感となり、要らない存在感が増す。だから太らないようすごく注意している。

うちのマンションにはエリートフィットネスというジムが入っていて、頻度の差こそあれ産後からずっとそこに通っている。名前からして選民意識をくすぐるタイプの外資系のお洒落なジムで、マシン類も一通りそろっていて、ぴかぴかに掃除されている。健康志向というよりファッション性に重きを置いていて、バッチリメイクのベトナム人の芸能人を使って、“ワークアウト”することがステータスでファッショナブルなライフスタイルだというイメージ戦略で売り込んでいる。いちいち広告ビデオやマシンエリアの名前にElite active, Elite work, Elite yoga…と、Eliteという言葉を持ち出して、無駄に上流階層意識を醸造しようとしている。
そんな意識高い系向けのジムなのだが、スタッフはトレーナーを除く大半が意識高い系ではない低賃金のバイトなので、結構体たらくな仕事ぶりを垣間見る。スタッフは交代で更衣室で寝ているし(スタッフルームはあるが監視カメラがついている)、掃除のおばちゃんは背の高い私を毎回毎回驚愕の表情で見上げてくる。(いやそんなデカくないだろとは思う) ピンヒールでジム内を闊歩するKYなマネージャーがいると思えば(最近見ない、辞めたようだ)、こいつにはフィットネスの利点を力説されたくないと思うような肥満体系のスタッフもいる。従業員は基本的にずっと自分のスマホでネットサーフィンしている。ハードはよくてもソフトが追い付かないのはベトナムでは良くあることで、資本注入側の外国人の駐在が手取り足取り設計して現場定着させる。聞くところによると、高島屋がホーチミン市に進出した時、一番難点だったのは従業員にスマホをいじらせないことだったらしい。

話が逸れてしまったが、つまりはこちらのいつも通っているジムで集中的にダイエット企画を実行することにした。
実は日本にいたときに、パーソナルトレーナーをつけて筋トレしていたほどきっちりトレーニングしていた時期もあって、筋トレと有酸素運動を組合わせ、食事制限もして体脂肪を減らすという王道の管理方法をこの時覚えた。ちなみにこの時についていたトレーナーは私の周りにはあまりいないタイプの人で、思考回路が自分と全然違った。仕事の領域が違いすぎて会話のための共通ネタがないのもあるが、それでも過去の会話を忘れたり、話が飛躍したりと、話の進め方が自分と全くことなるのが興味深かった。お客が複数いるから覚えらないのだろうけど、それでもたびたび同じ質問をしてくるので逐一答えてあげていたら「それノトさん先週も言ってましたよ、僕のほうが覚えてますね」とぬかしやがる、脳みそまで筋肉みたいな人だった。ある日好きな作家の話になって、私が村上春樹のファンだという話をしたら、「あーあのIQ84の人ですね」と言っていて、それはお前だろと思ったものだ。
結局出張も重なったりで3か月程度でやめてしまったのだけど、筋トレのいろはとパーソナルトレーナーという職種を知った有意義な経験だった。その時覚えたトレーニングのコツやメニューの組み方を活用して今のダイエット企画に活かしている。興味がある人は多少お値段が張るけれど、一考の価値ありです。

今ちょうど一か月経って、腕周りは多少ましになった気がするのと、腹筋がうっすら割れてきたので、旦那さんに少しスリムになったと思わない?と聞いてみた。すると例によって威勢よく、「うん、以前は腹周りにはバインミーの生地のような肉があったけど今はなくなったし、二の腕の肉はプルプルプルプルと波打ってたけど今はなくなったよ!」とのことだった。仏のような笑顔で何というシュールなコメントだろうか。“パン生地のような腹の肉”などなかなか思いつく表現ではない。先日うちでピザを生地から作った時に「まるで奥さんの腹のようだ」とでも思っていたのだろうか。「内心そんなディスってたなんてひどい」というと、「僕はハニーが望むように正直にしゃべっているんだよ。それにぽっちゃりしていても世の中の“おかあさん”達のイメージでそれはそれで良いと思うよ」とのことだ。こちとらバリバリのキャリアウーマン、世のオカンのイメージなんて求めていないんだよ!
多少細くなったような気がして喜んでいたのも束の間、”腹にパン生地ついてた”と表現されて、安定的に筋肉質な体系になるために今後も気を緩めずトレーニングに臨まねばならないと気持ちを改めるのであった。そういえばうちの会社には、「太ったらクビ」を全社員に公言している上司がいて、そのこころは自己管理すら出来ていないのにプロジェクトの管理などできないというもので、確かに一理ある。思えば旦那さんのパン生地云々より、会社をクビになるほうが致命的である。旦那さんの無邪気な失言を原動力にするのみならず、自分の置かれた立場を認識し、適切な体型維持に励みたい。尚、タイトルに入れた#腹にパン生地 は、どなたでもインスタで使ってもらって結構です。

 - ベトナムをゆく

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