ノトニクル

ノトがベトナムのどこかをうろつきます。

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帰省してごろごろした話①湖編

      2019/07/27

ミエンドンバスターミナルからいつもの真っ赤な大型バスに乗る。欲望と冷徹が混沌と渦巻く大都市サイゴンから、我が辺境の地ダクノンへ向かう。一度ダクノンに入ってしまうと、戻る手段はこのバスの復路便しかない。命綱をつけて山の奥地へ入り込むような気分だ。しかしダクノン通いもおそらくもはや10回目くらいでだいぶ慣れた。ダクノン仕様に気持ちのスイッチをうまく切り替えられるようになった。ダクノンという清貧の村において”強欲にまみれた罪深き都会人が懺悔するイベント”みたいな捉え方をするようになって、自分の中でルーティーンイベントとして確立し始めている。最近引っ越したホーチミン市2区が、純粋な外国人地区でベトナム色に欠けつまらなすぎて、ローカルの空気を吸いたいと、寧ろ今回は自ら望んでダクノンに来た気概すらある。ただし生活スタイルはあくまで都会人なので、2区のおしゃれストリートで買ったオシャレ石鹸やらボディーオイルやらを持ち込んで、掘っ建て小屋生活においても最低限のオシャレライフを維持せんと準備はして来たが。

6時間程バスに乗る。子供は派手に下痢をしてくれた以外は、Youtubeを観たり寝たりしていて終始大人しくしていた。
前回ダクノンに来たのは騙されて結婚式をやらされた半年前くらいだったが、その半年で若干の変貌を遂げていた。Dien may xanhという大手の家電量販店とHondaのディーラーが出来ていた。中程度におしゃれを目指したカフェもポツポツできていた。どんな理由でこんな投資を誘致できたのかと思ったら、後日行くタユン湖という近くのダム貯水湖が新観光地になりつつあって、そこの経由地である旦那さんの村クアンケ村がにわかに盛り上がって来ているということだった。
ところで旦那さんの故郷を大雑把にダクノンと呼んでいたが、ダクノンは省の名前であり、正式にはダクノン省 (Tinh Dak Nong) ダクグロン郡(Huyen Dak Glong) クアンケ村(Xa Quang Khe)という村である。ダクノン省にはクアンケ村よりずっと立派な街がたくさんあるので、区別するためにも以降はクアンケ村と呼称させていただく。ちなみにダクノン省ダクグロン郡クアンケ村は全部もともと漢字表記されていて、「得農省 得格朗郡 広溪社」となるそうだ。私は中国語知らないのだが、中国語がわかる方は中国語のピンインとベトナム語の読みの相対性がよくわかると思う。こんな辺境の地でも歴史のつながりに触れられるなんてちょっぴり感動する。学生時代こういう風に歴史を体験できれば絶対もっと成績良かったと思う。余程興味なかったのか歴史の知識なんて一つも記憶にない。教員の顔すら思い出せないと思ったらそういえば専攻地理であった。

クアンケ村の発展とともに、旦那さん実家の生活レベルも幾分マシになったような気がした。まずバストイレスペースがホテルの星0から星3レベルにだいぶマシになった。以前は、これ海岸で拾いましたかってくらいボロボロの板を扉に見立てたトイレスペースにシャワー(冷水)が付いていた代物だったのだけど、今や清潔感ある白タイル貼り小屋別館が新設されて、そこにTOTO風(だがTOTOではない)の水洗トイレが導入された。トイレットペーパーも流せる。シャワーは温水も出るようになった。あとは扇風機が増えて至る所が涼しくなった。扇風機はおそらく5−6台ある。家中、風が強く吹いている。正直、エアコン1台買ってくれと思わないではないが。

クアンケ村に到着してまず最初にTa Dung湖に行くことになる。旦那さんの姉が以前写真をFBに載せていて、すごく綺麗だったので行ってみたいとリクエストしていた。近いというので軽装を装って出かけたら、20km先で全然近くなく、1時間弱バイクで日照りに曝されて運動会の小学生みたいに日焼けをすることになった。
Ta Dung 湖はドンナイ3ダムという貯水湖で、山の谷に水が貯まって出来た溺れ谷でありリアス式海岸のように複雑に入り組んでいる。その景観がどことなくハロン湾を彷彿させ美しく、3年くらい前から観光地として有名になり始めた。まだタユン湖を掲載した日本のメディアなんかもないし、Ta Dungでググっても英語の記事すら出てこないけれど、徐々に観光地としての知名度は高まってきているらしい。まだほとんど全くと言っていいほど開発されていないのだけど、開発されることを見越してあるホーチミン在住ベトナム人がこの辺りの土地を買い占めたそうだ。5年後10年くらいには、第二のハロン湾とまではいかなくても第二のサパ(努力目標ベース)くらいのポジションになっているかもしれない。少なくともダクノンには他に観光地もないので、ダクノン観光といえばタユン、くらいの存在にはなっているだろう。地球の歩き方には永久に載らないと思うけど。

現段階は新興ほやほやの観光地なので、まだまともに整備はされていない。クアンケ村からバイクで山道を走り続けて小一時間、突如Ta Dung TOPVIEW HOMESTAYというテーマパークみたいな区画が現れる。中に入ると、あまり整備されていない花畑や宿泊可能なロッジなんかがあって、もっと奥に進むと眼下にTa Dung湖一面が広がるスペースに出る。
Ta Dung湖は美しいは美しいが、このTOPVIEW HOMESTAYが安っぽすぎて、
Ta Dung湖の素材を活かしきれないどころか全体をチープなものにしていた。この場所自体は宿泊施設のロッジもプールもレストランもあるのだけど、ロッジはやっつけ仕事で作ったような簡素なもので、プールは結構濁っていて、レストランは人手不足で運営していなかった。ここに泊まったらすごく退屈そうだ。やることがなさすぎて10分くらいで帰路に着いた。5年後くらいにレイクビューの小洒落たレストランがオープンしていれば、ランチで使ってもいい。(ディナーだと何も見えないだろう)

TOPVIEW HOMETOWNから見えるタユン湖
その後ろのがっかりプール

Ta Dung湖から帰って来て昼ごはんを食べて昼寝となる。ダクノンに限らずベトナムは日中の一番暑い時昼寝をする習慣がある。食べて眠くなるから寝るというより、暑すぎて熱中症になるので休むという意味合いの方が多分強い。私もいつもは昼寝の習慣こそないが、クアンケ村では真昼から3時あたりまで暑すぎて動くことが実際不可能だったのでやむなく昼寝をしていた。家の中で寝ていたのだが屋根が薄くて熱が家の中に篭るので、外の日陰で昼寝することにした。空気が暑いというよりは太陽光が強くて暑いので、むしろ外で日陰にいた方が涼しかったりする。家のすぐ近くに湖のほとりに大きなマンゴーの木があるので、その日陰で寝ようとパイプベッドとハンモックを運ぶ。湖畔の木陰でハンモックで昼寝なんて、描写的にはかなり洒落た休息スタイルのようにも聞こえるのだけど、実際湖は赤土で赤茶色に濁っており全く風情がないし、何より蝉の季節でミンミン煩くて寝られたもんじゃなかった。(寝たけど)

より疲労したような気がする昼寝の後、面白そうだからとマンゴーの木からマンゴーを刈り取る。3mくらいある竿竹の鍬で狩って落とすのだけど、めっちゃ硬いマンゴーが義母に当たりそうになって嫁姑問題に発展するところだった。無事よけてもらえて余計な仕事が増えずに済んだ。マンゴーは超絶酸っぱくて、よりによって父ちゃんはなんでこんなろくでもない品種植えたんだろうと思った。自生していたんだったらしょうがないけど。

その夜は日焼け痕が痛くなって、持って来ていたボディーオイルをたんまり塗ってしのいだ。おしゃれボディーオイルが傷を治癒するというオイル本来の用途で活躍し、オイル的には冥利に尽きるのかも知れないが、私が求めたリラクゼーションとは無縁だった。ダクノンの粗野な自然環境に都会のオシャレが瞬殺された瞬間であった。

 - ベトナムをゆく

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